交換戯曲
後藤章大×長谷川公次郎
  • 登場人物は『3人以内』
  • 1ツイート内で台詞とト書きを執筆し相手に渡す
  • 1ツイートの制限時間は『5分程度』
  • 相手への返信の形で続きを執筆する
  • 合計『30ツイート』で終了
  • 作:後藤章大(廃墟文藝部)、長谷川公次郎
  • 執筆日:2017年8月18日
  • タイトル:正体不明(MO-RI-Y様よりご提供)
  • 場所:高架下(あげ様よりご提供)
  • 時間:冬(とくろう様よりご提供)
後藤

とある高速道路の高架下。テナント等は無い。空き地スペース。コンクリの床にゴミがいくつか落ちている。不法投棄された大型ごみも。

A「……」

スーツ姿の20台後半に見える男(A)がそこに立っている。 冷たい雨が降っている。あるいは雨宿りかもしれない。

長谷川

10代くらいの女(B)が遠くから走ってくる。
傘はささずにずぶ濡れである。

B「濡れちゃった。なんで突然降ってくるの。もう」

一人でずっとブツブツ言っているB。
AはBがどうも邪魔のようである。

A「すいません。少し向こうに行ってくれませんか」

後藤

B「え?」
A「ここはダメなんです」
B「は?」
A「ちょっと、使うので」
B「はぁ……」

Bはしぶしぶといった様子で、距離をとる。

A「すみません」
B「はい」
A「そうじゃなくてですね」
B「え?」
A「この高架下から出て行って欲しいんです」

長谷川

B「いやわたしここで待ち合わせだから」
A「知らないよ」
B「いやだからここじゃないと駄目でしょ、待ち合わせ場所なんだから」
A「言ってることは分かりますがぼくも今からここで待ち合わせですしぼくの方が先な訳だから帰ってください」

後藤

B「待ち合わせって……こんな場所で?」
A「お互い様でしょ?」
B「まぁ」
A「先に来たのは僕なんで」
B「でもなぁ……」
A「待ち合わせの場所変えてもらうとか」
B「でもだって……ほら」

高架下の外を指す女。まだ冷たい雨は降っている。止む気配もない

長谷川

A「いやごめん本当に。大事な待ち合わせなんです。命が掛かってるんです」
B「マジですか」
A「下手すると地球滅亡」
B「マジですか」
A「ごめん言い過ぎた」
B「てか別にわたしは気にしませんけど、来て貰っても」
A「だから。誰かいると現れないんだって」

後藤

B「……現れる?」
A「……」
B「え、それは幽霊的なあれですか?サムシングですか?」
A「なんでもいいでしょ」
B「それか、宇宙人的なあれですか?チャネリング的な?」
A「あなたには関係ないんで」
B「あれですか。あの、牛の内臓だけ抜き取られる奴」

長谷川

A「好きに理解してください」
B「理由教えてくれたらどいたげるけど」
A「嫌です」
B「早っ。もしかして言うと殺される的な」
A「世の中はあなたが知っているような世界ではないのだよ」
B「あ。分かった。中二病ですね」
A「違うっ」
B「じゃあ教えてよ」

後藤

A「……神様をね、待ってるんです」
B「…」
A「…」
B「やっぱり中二病じゃないですか」
A「違う!」
B「そんないい歳して恥ずかしい」
A「だからそういうのじゃなくて……」
B「やっぱりハンドルネームに「♰」付けたりするんですか」
A「絶妙に古い」

長谷川

B「ほらもう行ってよ」
A「そういうあなたはなんなんですか。大した用事じゃないんでしょどうせ」
B「ああそういうこと言いますか。じゃあちょっとだけ見せるから。見たら行って」

懐からそっとナイフ的なものを出すB。
雨の音だけが静かに鳴り続いている。

後藤

A「……その程度か」
B「は?」

男(A)は背負っていたリュックサックを下ろし、ファスナーを開ける。 中からは小型のチェーンソーが出てくる。

B「…………」

雨の音が聞こえる。男はその中、チェーンソーを「フォオオオン!フォオオオン!」と鳴らす。

長谷川

A「それじゃ世界は救えないよ」
B「あ、はい。うん。というかなんでそんなものを」
A「だから世界を救うんです」
B「でもそうすると逆にそれだと物足りない気も」
A「リュックにはもっと色々ある」
B「ドラえもんみたいですね」
A「さあ出てこい!」

後藤

A「これが、竜の鱗を地獄の業火で鍛え上げた剣」
B「やっぱり中二病じゃないですか」
A「ちーきゅーうーはーかーいーばーくーだーん」
B「のぶ代」
A「そしてこれが」
B「これが?」
A「最終兵器」

そこには先端が輪っかになった無骨なロープが1本

長谷川

それを見て、無言のまま、懐のナイフでロープを切るB。

A「あ」
B「危ないでしょ」
A「あなたの方が危ない」
B「こんなので何しようとしてんのよ」
A「見りゃ分かるでしょ」
B「死ぬくらいなら殺しなさいよ」

後藤

A「……その程度か」
B「は?」

A、無言でリュックを逆さにする。どさどさと山のように先端が輪っかになったロープが出てくる。

A「戦いは数だよ兄貴」
B「兄貴って誰よ」
A「死ぬんじゃなくて殺すんだよ」
B「は?」
A「戦って殺すんだよ。自分を」

長谷川

B「なんなのよこのファンタジスタ。わたしは戦って生きるわよ。今からここで一人殺すつもりなの」
A「誰を」
B「誰だっていいでしょ。だから出てってよ」

そこに10代くらいの女(C)が入ってくる。

C「あ、ごめん。待った?」

後藤

A「なぁに。僕も今来たとこさ」
C「(Bを見て)この人は?」
A「通りすがりだ」
B「え、」
C「あなた、悪いことは言わないんで、すぐここを出て行った方がいいですよ」
B「は?」
A「巻添を食いたくなければ」
B「え、でも」
A「来ないよ、待ち人は」

長谷川

B「なんで?」
C「向こうで殴っておいたから」
B「なにしてんのよ物騒な」
A「だがこれからもっと物騒なことが始まる」
B「というかね。ああもう面倒臭い。何が起こるか分からないけどわたし関係ないから。出てって貰っていいかな本当」

後藤

A「止んだね、雨」
B「え?」

気が付くと、確かにさっきまで降っていった雨の音はしない。 静寂が、ただ、そこにある。

C「そこの角曲がったところで、伸びてますよ待ち人」
B「……」
C「今ならやりたい放題。勿論、死んではいません。今はまだ」

長谷川

Cの言葉を聞いて走り出すB。

A「流石ですね」
C「そりゃまあ」
A「でも神様が人殺しを見て見ぬ振りしていいんですか」
C「あの子には出来ないよ」
A「なんでもお見通しですか」

後藤

C「なんでもお見通しなんです」
A「で、」
C「はい」
A「死にたいんです」
C「はい」
A「(山の様なロープを見つめ)何百回も試したんですけど」
C「ダメでしょうね」
A「ダメでした」
C「そういう呪いですから」
A「いい加減許してくれませんか?」

長谷川

C「まだ駄目。でも、あれ、何年目だっけ」
A「今年で532年目です」
C「ああそう」
A「あの子も許さないつもりですか」
C「わたしの姿を見ちゃったからね」
A「あの子にはいつかわたしの年上になって年老いて死ぬ権利を与えてください」

後藤

C「それをあなたが見届けるの?」
A「はい」
C「あなたへの罰としてはいいかもね」

C、リュックの中身を物色し始める。

C「いっぱい集めたね」
A「……」
C「試してみる? このチェーンソーとか」
A「……」
C「試す勇気も無いなら呼ばないでよね」

長谷川

A「もう許してください。ぼくが何をしたっていうんですか。この高架下に大雨の日にだけ現れるなんて、なんでこんなローカルな場所なんですか。532年前、たまたま降臨したあなたにぶつかって食べていたパンを落としてしまっただけじゃないですか」

後藤

C「私、理不尽かしら」
A「理不尽ですよ」
C「でも理不尽なのが神様だから」
A「…」
C「雨あがっちゃったからこれで」
A「…」
C「次はもっと長く降るといいね」
Cが去る。

Aはチェーンソーに手を伸ばすが、結局何もしない。
しばらくしてBが現れる。

長谷川

A「くそ。神を倒すにはチェーンソーだと噂で聞いたんだが」
B「あれ、さっきの人は」
A「帰ったよ。で、待ち人はどうしたの」
B「殴られてびょーんってなってるの見たらどうでも良くなった」
A「ところで」
B「ん?」
A「身体になにか変化ない?」

後藤

B「え?なに?セクハラ?」
A「は?」
B「別に何にもないですけど」
A「ならいいけど」
B「あえて言うならなんだか妙に元気かも」
A「…」
B「なんでそんな顔してるの?」
A「もし何かあったら、雨の日にここに来なさい」
B「は?」
A「覚えといて」

長谷川

B「いやいや。ほんのちょっと一緒に時間過ごしたからって恋が芽生えるとか思わないでよ。そんな些細なことで人は動きません」
A「でもその些細なことが大事なんだよ。ほら名刺」
B「うわきもっ」

逃げていくB。
そして月日が流れ、同じ場所。大雨。

後藤

B「あ」
A「あ」
B「本当にいるとは」
A「雨の日は大概」
B「へぇ」
A「まぁこれくらいの雨じゃ多分来ませんけど」
B「なんか死ねないんですけど」
A「そうですね」

B「言ってた事分かった気がします」
A「え?」
B「戦って自分を殺すって」

長谷川

A「時間は嫌になる程あるから」
B「そうですね」
A「これから何年二人で過ごすことになるだろう」
B「覚悟しないとですね」
A「そう」
B「けど」
A「ん」
B「残念なことに全然タイプじゃないんですよね」
A「ああそう」

空を見上げる二人。